7月以来。

 

みなさまご無沙汰いたしております。7月以来、ホームページでお目にかかることもできないでおりました。圧迫骨折で寝たきりの生活が続き、ようやく起き上がれるようになりましても体力の衰えはなかなか回復いたしませんでした。それでもお客様方にお越しいただき、私といたしましてはただただ感謝いたしております。月に一度、染め屋さんが来てくれます行事も毎月何人かお見えいただき、誂えの染めもご注文をいただき、このような老人のわたしも生き甲斐を感じさせていただいております。たきちはまだ法人の形をとっているのですが、会計士もう限界ではないですか・・・と助言をいただき、3~4か月をかけて法人を閉じることにいたしました。商品はもう150点くらいですので、たきちのホームページ上で処分いたしてまいりたいと思います。もう後のない時期に至っていますので、値段は原価を割って、処分の値段にさせていただきます。毎日1~2点をアップさせていただきます。どうぞお気に召すものがございましたらメールでも電話でも頂戴したいと思います。

ちなみに写真の袋帯はたきちが13万で最初にご覧いただいております。ともかく処分の値段といたしまして、¥50,000、-(税別)でおねがいいたします。おしゃれな帯地で、ネットをご覧の方ですとよくご覧になられた帯地かと思います。紬や小紋などに合わせていただきたい帯地です。

逸品の小紋。

 

ようやく染めあがってまいりました小紋をご覧ください。江戸小紋の雪輪の柄に雪輪の形を抜染(色抜きのことです)いたしました。雪輪の形の型を彫り、色抜きいたしますが、白く抜いたところに色を挿します。雪輪の全体を色抜きをして、中の部分全部にに手描きで柄を描いたりも致します。コストの問題より好みの問題でございます。グレー地の雪輪の小紋にくすんだ黄色の雪輪の柄を飛ばす・・・心憎い瀟洒な小紋にあがりました。地色、柄などどのようにも作らせていただきます。

昨日、ある商社から金融処分品の展示を月曜日に行います・・・と連絡をいただきました。最近では北尾の倒産以降はじめてです。すこしくわしい話を聞いて、参加する旨返事をいたしましたのですが、お医者さんと相談しましたところ、もしコロナに感染したら、私の場合は、次回から気を付けます・・・という状況にはならないと承知で、お出かけなさい・・・と言われました。日常の買い物も介護の方にお願いしているような状況ですので悩みましたが、今回は断念することにいたしました。私のところまで送ってきてくれればいいのですが、五百数十点の袋帯は入札方式で処分するのがもっとも合理的です。自分の置かれた立場を感じました。わたしのような老人ではなく、若い人たちはそのレベルの機屋の帯地が金融で出れば、即刻、一日か二日で処分できるでしょう・・・と訊ねましたところ、多くの買い手が今回はパスします・・・と言われるそうです。丹後の機屋さんから京都の染屋さん、また、帯地の機屋さんなどの話を聞いているのですが、こんにちの業界の雰囲気をよく伝えている話だとおもいました。わたしは業界の中でも、展示会を中心に営業しているところは相当落ち込むであろうと考えていますが、帯地でも爪つづれの誂えなどはほとんど影響を受けていませんし、誂えの染めの分野でも、めちゃくちゃな値段で販売しているところは落ち込みが厳しいですが、地方の堅実な経営のところはそんなに落ち込んでいないように聞きます。やはり、買い継ぎの情報がもっとも実情に近いように思います。でも、業界全体としては、今年が終わって来年の様子次第・・・・・とおもえますので、まだまだ見通せないと考えています。80歳を超えてまだこのような生臭い話をいたしますのですから、じぶんながら度し難い老人だと思っています。

格調高い小紋

 

格調高い小紋の一点をごらんください。ごく濃い紫地に菱取りの手描きの柄をとばした付け下げとかわらないグレードの高い小紋です。このきものは付け下げとしてお召しいただけるように柄の配置を変えて制作することもできます。身長に合わせて柄をすこし大きくしたり、上前の柄を多くしたり、ご希望のように制作もさせていただきます。この反物は、付け下げよりも気軽におめしいただけるように小紋として制作されています。だいたい、東京を含む関東では付け下げの需要が多いのですが、関西を中心として、西は訪問着の需要が多いと染め屋さんは言われます。わたしなどは、付け下げをなお一層小紋風にアレンジした付け下げ小紋が今後新鮮に感じられ、需要が多くなるのでは・・・と感じているんですが、感覚的には東京に限定された世界のようでございます。でも、近い将来、いい仕事をしたきものをさりげなくお召しになる・・・こんな東京の感覚は、次第に全国区になってまいりますよう思います。値段を申し上げることが出来ませんが、小紋としては付け下げに近い格の小紋とお考えいただきたいと思います。

さしめさんの雨コート地

 

 

 

五百機織り(さしめ)さんの雨コート地3反をご覧ください。この3反ともに織り難があるAB反です。もちろん、コートになってキズが出るわけではございません。わたしも何十年もこのコート地を取り扱ってまいりましたが、AB反が手に入ったのは初めてのことです。すこし値段が開きすぎていますので、AB反としての値段を申し上げるのはごかんべんください。たぶん、今後もキズ物がわたしのところに回ってくることはないとおもいます。合格の生地の値段はいつにても申し上げます。ただ、米沢も雰囲気が変わってまいりまして、機屋さんの負担が重すぎるのを分散しようではないか・・・といった考え方がうまれてまいりまして、産地問屋(買い継ぎ)が自分の独自の柄を機屋さんに織ってもらう・・・方式を部分的に導入しておられるようです。優れた品質の品物が安定して提供してもらえることは私たちにとってはメリットがあることなのですが、競争原理はいくぶんかなくなるのでは・・・とおもいます。私個人としては、さしめさんの織物の品質を考えますと、まず、安定して継続していただくことが大切なことだとおもいます。それだけ上質の生地のメーカーです。

話は変わりますが、京都の仕立ての様子が大きく変わってまいりました。すでにトップメーカーでは20%以上の値上がりになっています。昨日、主力の仕立て屋さんと話していたのですが、1~2か月の間に値上げをお願いしなければなりません・・・と言われました。コロナ騒ぎ以降、仕立ての数が激減して、縫子さんを抱えているところは大きな赤字のようです。わたしは、安くいたしますのでぜひよろしく・・・と言われるかと思っていたのですが、そのような発想はどちら様もないようです。たしかに大きな問題だとおもいます。腕はよくないと困りますし、仕立て代が4万台になることは私には考えれませんし、従来のお仕立て代から3,000~4,000円くらい値上げさせていただかねばならないかもしれません。帯のほうは5月の末に大手の買い継ぎが倒産いたしました。わたしの存じよりの機屋さんたちは、減産をして注文だけに対応することでなんとか生き残りを・・・と言われます。いずれにいたしましてもしばらく様子を見ていませんとどちらに進むのかわからない時代だと思っています。

米沢、上質のお召し

 

 

先日、米沢の男物のお召しのAB反をごらいいいただきました。そのご、キズ物で上質のものがあれば・・・とご注文をいただきました。米沢もけっして大きな産地ではありませんし、鈴源の倒産以降男物のお召しも漂流しているような状態です。機屋さんも確固とした方針が立たず廃業や機を終わるところが多くなってきています。わたしが長年付き合ってきましたのは、買い継ぎなのですが、一人で機屋さん巡りをしていまして、掘り出し物をよく見つけてきてくれます。産地に居て、まいにち機屋さんと顔を合わせていますから、人間関係ができているのでしょう。今回はいい機屋さんのお召しです。上の4反がAB反で、下の2反が合格品です。合格品は10万を超えます。上の4反は¥38,000、-でお求めいただきたいと思います。色が実物と多少ちがいがあります。確認の上お求めください。

打たせ糊の付け下げ

昨年ご覧いただいたことがあると思います。中の柄は桐ではありませんでしたが糊自身は同じ染め方のものです。上品な付け下げとしてお召しいただけることになりました。他に薄色のボカシの付け下げなどもお求めいただいたのですが、写真に撮りましてもその陰影があまりにも微妙で、わたしの写真技術では到底及びませんのでみなさまにご覧いただくことはあきらめました。

今回は、来年の初釜のためのきもののデザインをご覧いただいたお客様がいらっしゃいました。一年をかけて創作させていただくことがこの数年つづいています。ほぼの基本のデザインは今月か来月くらいに決まりませんと時間的にゆとりをもって作れませんので、コロナ騒ぎの中でも時間を取っていただいたのですが、ご希望がカラーの訪問着で、これは大変に難しいご注文です。わたしには自分の中にカラーの訪問着の世界がいくら探してもありません。しかし、さすがに一流のプロですね。図案を染め屋さんが提示してくれました。さらに、お客様が、その図案に対してすこし変更の希望などを申され、ふたりのやり取りは中身の濃い、すばらしいものでした。私は呉服屋でありながら、蚊帳の外・・・といった感じで、話の中に入れませんでした。自身、老いた・・・と実感いたしました。呉服屋は必ずしも自身で創作する必要はありません。創る人とお召しいただく方の間に入って、双方のいい面ができるだけ生きますよう、また、円滑に進行しますよう内側で配慮してゆくことも大きな役目ですから、あまり余分なことを申さない方がだいたいにいいのですが、話は理解をし、出来上がりを頭に描いておかなければ役目を果たせません。でも、今回は、お客様と染屋さんに追いつけませんでした。とても考えさせられた日でした。