糸目

糸目は、地と柄の部分の境目に防染のために置く糊のことを申します。漏斗状の紙筒にゴム糊をいれて、搾りながら細い線で輪郭を描いてまいります。二枚の写真をご覧いただきますと、左右ともに手描きの友禅なのですが、右の友禅のほうが立体的で、輪郭がぱっちりとしています。きものにとっての糸目は大工さんのノコギリ、あるいは鉋に相当するでしょうか、美しい鉋跡が家の出来映えを左右するように、糸目もとても大切なきものの要素です。普通の型紙をつかった友禅はこの糸目も必要がありません。糸目で防染するものは、手で色を挿す手描き友禅の世界だけです。みなさまデパートなどできものをご覧いただくときに、どうぞ糸目の冴えも選択の一つの基準にお考え下さい。糸目が素晴らしいきものは色挿しも同じレベルの職人の手になります。図案、糸目、糊、地色の引き染め、彩色、蒸し、水洗、仕上げの金加工、刺繍とすべての工程のうち、一つの工程でも手が落ちますと、かならず出来上がりは落ちてしまいます。ちなみに値段は左の写真のきものを10としますと右の着物は20あるいは25が限度で、それ以上はわたしですと求めません。でも、実物を手に取っていただかないとなかなかわかりにくいことでもございます。どうもわたしが一目でわかる写真を提供もしないで、勝手なことを申し上げているのではないのだろうか・・・とおもっています。呉服屋の独り言にお付き合いいただいたようで、申し訳ございません。