菱健、付け下げⅢ

菱健の付け下げの中でも、この図案は一部をとったり、柄をすこし大きくしたりしながら、染めてまいりました柄です。今回は、けがの功名と申しますか、違う地色をお願いしたのですが、染め上がりはこのアイボリーでした。しかし、とてもいい色でしたので注文とは違うのですが、引き取りました。江戸時代は「四十八茶百鼠」といわれたくらい茶色と鼠色は大流行したのだそうです。もっとも、これには歌舞伎の役者さんの愛用の色が大きく影響したようですが(梅幸茶、芝翫茶、路考茶など)鼠色はもう少し違う角度から考えたほうがいいようにおもいます。江戸時代はたびたび奢侈禁止令がでました。消費の過熱を防ぎ、財政の放漫を引き締めたい政府の施策なのでしょうが、男性が羽織の裏地に凝ったり、女性も地色は抑えながら染そのものに凝る・・・ような風潮が起こったようです。その表れとして、ネズは流行した面があると思います。現在、わたしの周囲でも茶はあまり用いられませんが、ネズ(グレー)は多くの方が好まれ、究極の色・・・として好まれています。この着物は地色を正確にお伝えできなければだめだとおもうのですが、それが大変です。上の写真の左側が近いとおもいます。明るいアイボリーをご想像いただきたいと思います。品のいい付け下げです。加工は菱健さんですから、糸目、彩色ともに評価していただける加工です。生地は染め上がりのいい丹後の重めの無地意匠です。控えめな優れものの付け下げとしてお召しください。¥170,000(別税)でお願いいたします。