友禅の工程

<都合により写真を削除させていただきました>
この訪問着は今年の7月ころから制作が始まりました。お客様の、きちっとした訪問着を作っておきたい・・・とのご注文をいただき、図案の選定から始まりました。ちょうどお気に召す図案が二つあり、その一つがこのきものでした。元の図案が色留袖でしたので胸、肩、袖の図案がありません。また、身幅が違いましたので、図案の作り直しから手掛けてまいりました。図案は家を建てる時の設計図にあたります。きものの骨格がここで決まります大切な基礎の部分です。手直しをしながら図案が完成いたしましと、糸目を置く工程になります。細い線で柄の輪郭を描いてまいります。糸目は置く人の技量に大きく左右されます。命はここで吹き込まれる・・・・と申し上げれるくらい大切な工程です。そして、防染のために、色を挿す部分を糊で伏せます。地色を引き染めする工程が待っています。お客様はベージュの地色をご希望だったのですが、わたしも染屋さんもお客様がお召しになられるのに、この柄ですとブルー系がよく生きるのではないでしょうか・・・と申し上げて、なかば強引にブルー系の中間色をお勧めしました。たぶん、いまもってこの色がお似合い・・・と自画自賛しています。羽織っていただきましてもとても新鮮に感じます。地色が染まりますと、蒸気をかけて地色を定着させ、防染のための糊をはがし、柄の中に色を挿してまいります。この訪問着は離れてご覧いただきましても、同じ系統ながら、少しづつ違う色を挿していっておられます。この部分は、染屋さんと職人の呼吸です。私が口をはさむことではなく、信頼してお任せいたします。このきものも、少しづつ違う色を挿しながら、全体としてくどくない、上品な仕上がりになっています。色を挿し終えますと、蒸しと申します蒸気で加熱して色を定着いたします。そのあと、金加工と刺しゅうで仕上げをいたします。刺繍も目立ちすぎないように細い糸でさらりと繍います。全体として、自己主張の勝った部分はありません。わたしは地染めまではとても心配していました。地色は難しいです。ごくわずかでもイメージに外れますと、違うきもになります。地染めを見て、ほっとして、あとは色挿しの職人さん、そして染屋さんにすべておまかせいたします。地色は夢に見ました。でも、職人さんたち皆さんの力を集めていただき、一つの意味ををもった着物が生まれたとおもいます。温和な表情の中に芯の通ったしっかりしたつくりのきものでございます。