羽裏の値段につきまして。

最後の半年で、値上げをお願いしなければならないのは残念なことですが、品物を落とさないで仕立ててゆこうとおもいますと、値上げをお願いしなければなりません。いままでたきちでは普通の羽裏の生地では軽すぎますので、友禅の長じゅばんの生地を羽裏に使っていました。在庫がなくなりましたので注文しましたら、同じものがこのたび八割ほど高くなっていました。いままでのわたしの原価よりはるかに高いのです。このたび申し訳ないのですが、¥14,500、-でお願いしなければなりません。生地も染めも国内の一流品です。長じゅばんになりますと35,000円くらいいたします。よろしくお願いいたします。

わたしは60年以上呉服に携わってまいりました。京都在住がが長かったので、作り方や原価は肌身に染みてわかっています。最近のメーカーや買い継ぎの動きを見ていまして、しみじみと大きな時代の変化を感じます。買い継ぎでも、染屋や機屋を育てて、いいものを継続して作ってくれるように責任をもって業界をリードしようとしているところもたくさんあります。でも多くのメーカーや問屋は利益中心主義と申しますか、利益を上げることに狂奔しているのが実情です。問屋の委託販売は悪しき商習慣だとおもいます。借りるということは、値段の交渉権を放棄するわけですから、商人の責任を放棄し誇りを捨てることです。わたしたちは皆さまがお勤めで給料を得られるように、経営を続けることが出来るだけの利潤は頂戴しなければ仕事そのものが成り立ちません。でも、公正にみて高い値段にならないように、生産者にも厳しく、自分にも厳しくなければなりません。それはわたしたちの誇りでもあります。でもこんなことを業界の中で申しますと腹を抱えて笑われます。みなさまの中にも、そんなことは美名に隠れたいだけのことではないの?と思われる方もあるかもしれません。皆様が商人をを育て、育てていただいた商人が次の時代のお客様にものの作り方や、適正な値段の見極め方をお伝えする・・・ようなことの積み重ねが何世代もあっての高度な職人の技術が伝えられ継続できるのです。ネットで伝えれることなんて、頭の単なる知識に過ぎません。もっとも大切なことは解説書でもネットででも伝えれるものではないように思います。連休中におしゃべりがすぎました。