手つくりの染めの限界

 

 

二か月ほど以前に、この帯地はみなさまにご覧いただいたかとおもいます。同じ柄、色で、無地の生地に染めてほしい・・・とご希望のお客様があり、染めだしていました。昨日染め上がりが届きました。みなさまにもなんらかのご参考になるかもしれないと思い、注文品ですが拝借して掲載いたします。手のローケツなのですが、とても難しい染めです。糸目を置いた染めは一色づつ布端に色をテストしながら彩色が出来ます。ローケツは一度ですので、どのように染まるか染めあがってみないとわからないのです。この柄は二度とは染めません・・・と言われていたのをなんとか頼み込んで染めてもらいました。お納めする方はご満足をいただいていますので結果はよかったのですが、手のものは慎重に運ばねばなりません。じつは、真糊のきものも同じような難しさがございます。生地に青花で直に下絵を描いてまいります。まったく同じものを作ろうと思っても、似たものしか作れないのです。わたしが同じ柄を二つとは染めないのもご理解いただきたいのです。一つ一つがその世界なのです。二つ目だから偽物・・・ということではなく、一点一点の世界でございますね。でもこの帯、泥の単色の大島や、白大島にお締めいただきますと素晴らしいでしょうね。わたしも楽しみに待っております。