月に一度のわたしの楽しみ

 

 

 

 

 

 

みなさますでにご存知のように、私は今年中で引退の身でございます。年齢と持病のせいで責任を持った仕事は遠慮申し上げませんと大きなご迷惑をおかけする結果になるかもしれません。もうすでに京都のそれぞれのプロの方々にご紹介も済み、私を欠きましても大きくはご不自由のない状態にさせていただいております。写真は京都の染め屋さんが月に一度、東京に出張の折り、立ち寄ってくれます。その時に、創作を望まれるお客様や、新しい染め上がりなどを見たいお客様方が集まっていただいています。わたしは留守をいたしましても、みなさまお越しになられ、図案から創作なされたり、柄をお好みになられます。わたしも健康でしたら、参加させていただき、入院などで留守の時でもみなさまお集りなさっていただいております。いまはわたしの生き甲斐になりつつございます。お客様はいつにても京都まで染めにいらっしゃられるのですが、東京に居て、新鮮なきものに出会えますので、望まれる方々だけに、お越しいただいています。染め屋さんのご希望で、展示会ではありませんので、お一人かせめてお二人としかお目にかからないことにいたしてございます。本格的な染めの教室の面もございます。デパートの展示会などではわからない一流の職人の仕事を理解していただき、次の世代に伝えていただきたいと願って私が染め屋さんを口説き、望まれるお客様にお集りいただいております。わたしもまだ作品を見たい、求めたい・・・気持ちがございますので、おおきな楽しみでもございます。写真の後の方の三枚は、狂言紋と呼ばれる紋様の染め名古屋です。普通、織りの名古屋帯などでお能をなさる方々がお使いになられる帯なのですが、こちらのお客様が、染めで作りたいと半年ほど前から図案や染め方を詰めて、ようやく姿が見えてまいりました。ふつう、ゴム糸目ですと、地色が染めてある状態ですが、この染めは糊糸目(真糊)で作っておりますので、青花で帯地に直接図案を描いて染めてまいります。つまり、一点づつ創作する作り方になります。図案をなぞるのと違い、筆勢に力があり生きてまいります。この後、柄の部分に糊を置き、地色を染めて、刺繍などの加工を経て完成してまいります。まさに一期一会の帯地でございます。わたしも、参加させていただいている幸せに感謝しながら、勉強をさせていただいています。わたしが注文して創作をお願いしました、風神雷神の訪問着も染めあがってまいりました。近日中にごらんいただきます。