仏教の研究の成果

1990年代、アフガニスタンの内戦に伴い大量の仏典が古美術業界に流出しました。特に紀元前後の貴重な仏典であり、今までの定説を覆すような成果も上がっていて、いまもミュンヘン大学やワシントン大学で研究が進められています。日本でもたくさんの学者の方々が研究者として中身の濃い成果を発表されています。1980年ころまで日本でも専門誌上で縁起について論争が続いていました。その中にはインドの気候風土の研究を発表なされた和辻哲郎さんも参加なさっておられます。仏教は忘れられた存在ではなく欧米では真摯な研究がすすめられ成果も積みあがっています。具体的には仏教の五派といわれる上座部大寺派、説一切有部、大衆部、化地部、法蔵部の初期の経典の共通部分を確認して、お釈迦さまが確かに述べられたであろうお経を特定して、研究がすすめられました。その結果、布施、戒、四聖諦、縁起、五蘊、六処などの教えは間違いなく大乗仏教が起こる前、初期仏教の時代に広く伝承されていた思想であると現在では認められています。特に四聖諦、縁起、五蘊、六処はお釈迦様がいろいろな角度から物事を分析、思索をなされ、真理(悟り)に至られた核心の部分ではないかと考えられています。たくさんの学者の方々の著作のなかで、わたしがもっともわかりやすかった方の著作を通じて、通り一偏ですがお釈迦様の主張を考えてみたいと思います。もちろん、お釈迦様の悟りなどという大きなことは触れることはできませんが、伝道に入られたのちのお釈迦様の言葉を通して、私たちがどのように生きたら悩み少なく、心穏やかに生きてゆけるかはっきりと指し示しておられるように思います。