王道をゆく絽の付け下げ。

 

 

地色がどうしても出せません。まことに残念なことですが、もうすこし上級者でないとこの色は出せないと思います。ヒワ色。日本語のこの言葉はもう死語になってしまっていると思っていたのですが、この付け下げをおもとめいただいた方はそのように表現していただきました。私のコンピューターには、かって日本語として生きていたヒワの漢字がありません。耳なれないヒワの色をどうぞお調べになってください。味わいのある名前だと思います。この付け下げは多くの方が心を動かされる名品だと思います。贅を凝らした威圧的な面がまったくなく、礼装として十分に役目を果たしながら、過度な装飾もありません。わたしが若いころにもこのようなお嬢さんのためのきものはありました。そして、いまも作られ続けています。ちょっとご覧いただいたお茶の先生も、このような付け下げを娘に用意しなくては・・・とおっしゃっておられました。ちなみに娘さんは50歳を過ぎておいでなのですが、お召しになられれば、人柄とあいまってお似合いだろうな・・・と思いました。きものの持つ魅力の一面をとてもよく表現してくれている夏物だと思います。どちらかと申しますと素朴な飾らない付け下げでございましょう。味わっていただきたい一品です。