米沢、上質のお召し

 

 

先日、米沢の男物のお召しのAB反をごらいいいただきました。そのご、キズ物で上質のものがあれば・・・とご注文をいただきました。米沢もけっして大きな産地ではありませんし、鈴源の倒産以降男物のお召しも漂流しているような状態です。機屋さんも確固とした方針が立たず廃業や機を終わるところが多くなってきています。わたしが長年付き合ってきましたのは、買い継ぎなのですが、一人で機屋さん巡りをしていまして、掘り出し物をよく見つけてきてくれます。産地に居て、まいにち機屋さんと顔を合わせていますから、人間関係ができているのでしょう。今回はいい機屋さんのお召しです。上の4反がAB反で、下の2反が合格品です。合格品は10万を超えます。上の4反は¥38,000、-でお求めいただきたいと思います。色が実物と多少ちがいがあります。確認の上お求めください。

打たせ糊の付け下げ

昨年ご覧いただいたことがあると思います。中の柄は桐ではありませんでしたが糊自身は同じ染め方のものです。上品な付け下げとしてお召しいただけることになりました。他に薄色のボカシの付け下げなどもお求めいただいたのですが、写真に撮りましてもその陰影があまりにも微妙で、わたしの写真技術では到底及びませんのでみなさまにご覧いただくことはあきらめました。

今回は、来年の初釜のためのきもののデザインをご覧いただいたお客様がいらっしゃいました。一年をかけて創作させていただくことがこの数年つづいています。ほぼの基本のデザインは今月か来月くらいに決まりませんと時間的にゆとりをもって作れませんので、コロナ騒ぎの中でも時間を取っていただいたのですが、ご希望がカラーの訪問着で、これは大変に難しいご注文です。わたしには自分の中にカラーの訪問着の世界がいくら探してもありません。しかし、さすがに一流のプロですね。図案を染め屋さんが提示してくれました。さらに、お客様が、その図案に対してすこし変更の希望などを申され、ふたりのやり取りは中身の濃い、すばらしいものでした。私は呉服屋でありながら、蚊帳の外・・・といった感じで、話の中に入れませんでした。自身、老いた・・・と実感いたしました。呉服屋は必ずしも自身で創作する必要はありません。創る人とお召しいただく方の間に入って、双方のいい面ができるだけ生きますよう、また、円滑に進行しますよう内側で配慮してゆくことも大きな役目ですから、あまり余分なことを申さない方がだいたいにいいのですが、話は理解をし、出来上がりを頭に描いておかなければ役目を果たせません。でも、今回は、お客様と染屋さんに追いつけませんでした。とても考えさせられた日でした。

染めの感覚を忘れそうになりました。

 

 

コロナヴィールスに振り回された3ヵ月でした。過去形ではなくいまも大きな脅威として私たちのの身の回りに大きな影響を与えています。わたしは年齢的にも、持病の上からも感染するとまずヴィールスの格好の餌食になるだろうとは想像していますが、こればかりはいかんともなしがたく、できるだけ外出を避けて生活をしています。そのような生活をいたしておりますと、60年のあいだ毎日染め物に親しんでいました感覚がすこし鈍くなり、昨日見ていた衣桁の小紋がまた違った魅力を持って感じられたのが、あまり感動しなくなってまいります。わたしのようなちりめんや染めの世界で生きてきていますと、いいものに出会ったとき感動しなくなったら終わりだと私は思っています。単に売買ならばよろしいかもしれませんが、それでは人生がもったいないように思えます。お客様とはその方のきものの世界をおつくりになられるのをスタッフとして参加させていただいている・・・ように自分では思っているのです(生意気にも)。先日、京都の染め屋さんに電話をいたしまして、目の覚めるような素敵なものをもって出張してきてくれ!と叫んでしまいました。この小紋と帯はその折、お越しいただいたお客様にお求めいただいた品物です。小紋は、近江のちりめんと変わらない風合いを持つ紬地に手描きで友禅を染めています。わたしの写真の技術ではこれで限界なのですが、よく染めています。帯合わせはなかなか絶妙で、ぬいしめしぼりの素朴な縦縞の帯になされました。生地は小千谷です。緊張した二日の時間でしたが、私自身は生き返ったようにように思っています。寝床に入ってもいろいろとデザインや色合いのことを考えて眠りにつきます。しあわせな生活がもどりました。どちら様にも感謝しながら日を過ごさせていただけねば・・・とおもいます。

米沢お召しⅢ

 

米沢のお召しのB反で、柄は細かい縞です。機は特別にいいというわけではありませんが、米沢の中堅の機屋さんですから、特別に高級品を望まれるのでなければ、充分にお召しいただける生地です。お茶の方々にとっては、このような織キズができた堅実な織物は上手にご利用いただきたいものです。¥38,000、-(別税)でおねがいいたします。

米沢お召しⅡ

 

 

写真左の紋お召しは、キズ物ではなく、機屋さんの在庫の見切りです。品物はごく上質のものです。¥52,000、-(別税)でおねがいいたします。品質からもうしましてもとても安いと思います。右のお召し地も機屋さんの在庫の見切り品です。¥36,000、-(別税)でお願いいたします。

きものの業界もいまはとても大変な状態です。わたしはひそやかに、業界がお客様のために、よりいいものをより安く・・・という本来の目的を取り戻すおおきなチャンスではないのだろうか・・・と思っています。

 

米沢のお召し、見切ります。

 

 

先日来、京都の新しい仕立て屋さんと話し合いをいたしておりました。わたしは三社に仕立てをお願いいたしているのですが、それぞれに特徴があり、大手で安くはないのですが、いくらでも仕事いたします・・・というところ、中堅規模で京都市内の腕の利く人を集めているところ、そして、個人に近い形態で、腕のいい職人を持っているところなどです。わたしは腕のいい個人に近い形態のところが魅力的だったのですが、私が80を過ぎ、きちっと管理ができにくくなっていまして、八掛の生地は指示に従わなかったり、縫子の手にばらつきがあったり・・・と問題が起きまして、いい仕立て屋さんをもう一社探していました。先日二点仕立てが上がってまいりまして、とてもいい仕立てで、いまのところ気に入っております。ただ、みなさまにお納めする値段でわたしのところに届きますので、もうしばらく様子を見て、この仕立てをご希望なさる方がございましたら、わずかで結構ですので、値段のご協力をお願いしなければなりません。仕立てはとても大切で、おろそかには出来ないのですが、わたしが若いころのような質の職人は最近は望んでも得られません。地熨斗の考え方ひとつとっても違います。だいたい、地熨斗をしてから一日二日くらいは置いておきませんと仕立て上がってから袋が入ります。呉服屋直属の仕立てですと、よく話し合いますと納得してくれるのですが、会社を経由しますと、職人はなかなかいうことを聞かないものです。致し方ないのですが、わたしは苦労しても昔の人と人との関係で成り立つ職人の仕事が懐かしい思いでいます。

さて、写真の米沢のお召しですが、左の白生地がございます。この機屋さんは廃業なさるのですが、このお召しの機は、知る人ぞ知る名品だと思います。お好みの色に染めて第一装の紋付になります。袴下にお使いいただきたいと思います。2反ございまして¥52,000、-(別税)でお願いいたします。右のお召しはキズがございます。¥36,000、-(別税)でお願いいたします。

最後の手描き小紋

 

 

 

 

 

 

2か月ほど前ですが、お客様のご注文で手描きの小紋に取り掛かってることを申し上げていました。染め上がりをご覧いただきたいと思っていたのですが、染めが上がりましたので最後の一反としてご覧いただきます。じっさいにこのような小紋を染めますには、付け下げの3倍4倍の職人の手間を必要といたします。付け下げの緊張度より少しは緩いかもしれませんが、全体を通してバランスがとれていなくてはなりませんから、頭の中ではどのような構成にしてゆくか・・・・いつも生地と会話しながらの色挿しです。よほどのベテランの職人でなければ任せれる仕事ではありません。この柄は2尺の図案の繰り返しですので、下の写真の5枚は同じ構図です。色挿しが一枚一枚全部異なっているのをご覧いただけると思います。一反全体をこのように挿し色を替えながら雰囲気を変えず染め上げなければなりません。職人としてはやりがいのある仕事です。でも、仕事を出す染め屋さんとしては、付け下げの倍の値段はもらえませんし、職人には相応の手間を払わなければなりません。ベテランの職人の方たちが少なくなるにしたがってこのような重い加工の小紋は作りにくい時代に入ってまいります。今後のご注文には応じれません・・・と言われておりますので、この作品でわたしも終わらせていただきます。このような染め物を自分の最後の時期の仕事として与えていただいたことに大きな喜びと感謝をいたしております。また、高い染め物にもかかわらず、染めの手間や価値をご理解いただき、白紙の状態から染め上がりのイメージ、色挿しの感覚など何度かご希望を伺っての染めだしなのですが、信頼いただいてお任せいただいたお客様に敬意と感謝を申し上げます。