京友禅訪問着

京友禅の訪問着です。すこし加賀友禅の雰囲気がはいっていますが、基本的に京ものです。加賀友禅が爆発的に流行した時期があり、京都の職人や作家さんたちも実際に加賀に住んで、何年か修行して加賀の特色を学び、京都に帰って融合した世界を表現する方が多くおられました。落款はわたしも名前を大切にしているのですが、わたしたちの間では、落款がなければ値段はどうなのだ・・・・という議論をよくいたします。昭和30年代までくらいは業界のなかでも落款は評価の基準にはなっていませんでした。わたしは年の功もあり、きものの鑑定をよく頼まれます。そのなかで、昭和30年代40年代に染められたきものは香り高い名品であっても落款が入っていない着物が大部分です。落款を頼りに求められるお客様はあまりなかったのです。いまでも京友禅を代表するような手描きの逸品を作っておられる方にうかがいますと、作った人が自分の名前をお客様がお召しになるものに入れるという発想そのものがおかしい・・・・といわれます。わたしたちは縁の下の支えであって、おめしいただくお客様が主役なのだ・・・という職人としての基本的な自分を律するものがまだあるのです。それはさておき、このきものは名品ではございませんが、職人が自信を持っていいきものに作ろう!と思って筆を摂った作品には違いありません。強いタッチを出すために顔料を用いることもなく、穏やかな色遣いですが気品のある作品に出来上がっています。値段より作品のほうが価値があると思います。¥165,000、-(別税)でおねがいいたします。