捨松の名古屋三点

捨松さんは今月、また、来月もいい柄があれば求めてまいるつもりでいます。ただいま、バーゲン価格にさせていただきますが、次に入るものは、ねだんは別とお考え下さい。捨松さんも織機の機は少ないながらまだなんとか手に入りますが、手機の帯地は、もう織れなくなった帯地はたくさんあります。まことに残念ですが、織り手を育てるのには長い時間とお金がかかります。一生をかけて織り手になろうとおもう人も少なく、機屋さんも踏み切れないのが実情なのだと思います。でも致し方ございません。いまある状況のなかで、いいものを選んでいかなければなりません。¥65,000、-(別税)でお願いいたします。糸の質、織の丁寧さ、柄の感覚など、業界のトップとしての風格のある帯地だとおもいます。

わたし、ときどき何故着物業界はいまのような経営の在り方になったのだろうか・・・と思うことがあります。わたしは毎日といっていいほど、きものをお召しになられるお客さまが多いですから、いつも寸法の改良であったり、品質の改善、柄の選定や変遷などのことが頭から離れません。いいものを安く提供できなければ、私の場合は、即、失職いたします。お客様の手足として生きるのがわたしの仕事です。手足としての仕事は専門性が高く、きものを毎日お召しになられるお客様方にとって、必要な存在なのではないかと自負いたしております。ですから、品物が入りにくくなって困ることはありますが、わたしのような仕事がなくなるとは思えないのです。でも、業界の大勢は、きものは縮小する・・・と考えています。残念ながら数字から見たとき、それは事実なのだと思います。たぶん、その考え方が、生産者は自社の生産するものをブランド化して高値で売り抜けよう・・・とか、販売業者はどのような手段を使っても、売れればいい・・・といった経営の方向になってしまっているのではないかと思うのです。現実には生産額、量ともに激減しているのですから、そのような業者があらわれることもありうることだとは思います。でも、わたしから拝見していますと、流通を整備して、価格を半分に引き下げることでいくぶんかは状況は変わるのに・・・・とおもいます。売るための美辞麗句ではなく、きものの中側からの魅力が伝えられないと、事態はこのまま進んでまいりますような気がいたします。