帯の図案

なんかの御さんこうになるかもしれません。ただいま取り掛かっているブドウの柄の塩瀬の帯の図案をごらんください。今年の11月にはお使いになられる帯ですので、図案に変更がなければ9月に入りますと糊伏せ、地染め、彩色と工程を急がねばなりません。まず、糊をどのように伏せるか・・・この帯の注文の方は真糊で・・・とご希望ですので、青花で下絵を生地に描き、糊で伏せてまいります。真糊の場合は図案の上からなぞって糊を伏せることはできません。一点のものを作るように、筆で生地に直に下絵を描きます。真糊で描いた線が生きいきとしているのは、筆の勢いがそのまま表現されやすいからです。ひと月ほど前、素案を出してブドウの柄の帯を注文いたしました。二通りの図案を見せてもらいましたが、お客様がこの図案の方を選択なされまして、実際にはもうすこし小さく描いてもらうことでスタートいたします。ブドウの色をどのように表現してゆくのか、葉の色は・・・地色とのバランスは・・・など、これから染屋さんと色挿しをなさる職人の方との話を聞きながら、お客様の世界と帯そのものがよく生きて出来上がりますように相談をしながら進めてまいります。楽しい緊張感のある二か月ほどの時間を私も味わわせてもらいます。呉服屋の喜びでございます。この絵を描くくらいの職人は、染屋さんも一目置いておられますから、まず職人の意見を聞きます。わたしは、お客様のご希望を聞いていますので、おおよその ”このような感じに・・・”と申しますくらいで、細部までは申しません。染め屋さんや職人の人たちの独創性を尊重するほうが結果はいいものができるようにおもっています。このようなことを中心に毎日緊張をした日々をすごしていおります。ありがたい80歳です。