いい加工の小紋

 

 

手の込んだ摺り染めの小紋をおたのしみください。まだこのレベルの染めを提供できるところがあるのです。わたしは中学生のころから家業の手伝いで、学校が終わりましても、自転車でこのような染め屋さんを回って、加工を頼み、染め上がりを受け取って次の工程のところへ届ける仕事の手伝いをしていました。門前の小僧で、いつとはなくいい染屋さんの雰囲気といったものを感じるようになっていました。時代とともに染めの好みにも変遷があり、注文の多くなる染屋さん、少なくなる染め屋さんがあり、貴重な経験をさせていただきました。いい染屋さんはやはり自分の仕事に誇りを持っておられ、一種の格のようなものを持っておられ、わたしたち業者も敬意をもって接するのが当然でした。板場まで入って生地を届けますから、職人の方々の仕事ぶりは常に拝見していました。この小紋の染めも工程から、職人がどのような染め上がりを頭に描いて染めておられるかほぼわかります。まっとうな仕事がしてございます。わたしはこのような職人の仕事をたくさんの方々にお伝えし、ご理解をいただくことがおおきな役目だと思っています。わたしがこのような染めが好きで、なくなってゆくことにけんめいに抵抗しているにすぎないのですが・・・値段も染め屋さんももうしあげれないのですが、わたしと同じくらいの年齢の方ですから、どっぷりと染めの世界に浸かって数十年をすごされたかたです。最近の嘆きは職人の不足です。後継者が育っていないと会うたびに言っておられます。わたしはこのような仕事のきものを必要とされる方はまだまだ多くいらっしゃいますから、染めの文化は生き残ると思っていますが、日々つらい話を聞くことが多いです。