いちい、真糊、手描き染め名古屋

 

久しぶりに店頭にかえってまいりました。9月に入り、古いお客様からはわたしの状態をご承知の上で、このようなもの・・・(お茶の席にとってもっとも日常的に必要な、小紋に帯、付け下げ・・・・など)は目の前ですぐに入用なものなので、なまけて、言い訳ばかりしてないですぐに役に立ちなさい・・・と叱られております。もう退職させていただいたと思っていますので・・・と申し上げるのですが、直接いらっして、染屋に電話しなさい・・・帯地でも、機屋は何というところなら私の欲しいものを織っているのか・・・また、白生地のAB反は機屋にはないのか・・・と真剣に問われます。何十年とご愛顧をいただいてまいりました方々です。一つ一つに機屋さんや染屋さん、買い継ぎとやり取りしていますうちにすっかりお客様のペースに飲み込まれ、9月からもホームページには内緒で、付け下げや小紋や帯をお求めいただいています。開き直ったのではございませんが、同じことならホームページに掲載しようか・・・と思っています。ただ、多くはすでにお客様がお求めになられてものです。御了解を得てアップになりますから、全部をご覧いただくことはできません。永年お目にかかってきた・・・ということの重みと申しましょうか、気心がわかり、ご希望が理解できるということがどれほど大切かしみじみと感じています。いま、どこがどのようなものを作っているのか、メーカーだけではなく、流通からの情報が途絶えますとわたしはなんのお役にもたたないであろうことも承知いたしております。長くはできることでもございません。今年中は、すでに注文で別染めしています加工の完成品やご注文で私が求めたものなど、数は少ないですがごらんいただきたいと思います。ただ、品物のレベルは年々落ちています。とくに帯の機屋さんは軒数も生産の量もとても落ち込みました。袋帯はまだそれほどではないようですが、名古屋帯の良品が並みの値段では手に入りません。手機のものが買えない状態です。

ご覧いただいています染め名古屋は、ひと目見てわたしが感じてしまいましたが、同席しておられた若いお客様が「わたしがいただきます。」と先を越されました。お客様に優先権がございますので、ホームページにアップする許可はいただいたのですが、わたしの商品にはなりませんでした。みなさま長くホームページをご覧いただいていますから、この糊が糊糸目(真糊)だとすぐお判りいただいていますかと思います。真糊は次に同じものを染めましても、同じに上がってくるかどうかわかりません。一期一会の世界です。わたしが傑作が染まっても同じものを作らないのは、その怖さがあるからなのです。この作品もこの世界を表現しているのは、この一点・・・とお考えいただきたいと思います。もっと素晴らしい染め上がりが出来ないとは断言できませんが、責任をもって同じ世界を提供いたします・・・とはもうせません。晴れた日、曇った日、湿度、温度、職人の気持ち・・・全部から影響を受けます。そうですね。生き物だとおもいます。だからこその面白み・・・でもあります。ただいま、誂えの帯地が2点加工途中でございます。染め上がりをホームページじょうでご覧いただけますように、お客様にお願いいたしております。ご覧いただき、何かご参考になれば、とても喜ばしいことと思っています。