打たせ糊、付け下げ

この作品も昨年の傑作のひとつでした。ご覧いだいた方の多くの人が心に残ったとおっしゃられています。何気ないちょっと見過ごすような付け下げなのですが、打たせ糊という特殊な糊のせいばかりでなく、総体に気品のあるいい仕事の付け下げです。私にいたしますと、このような雰囲気をたたえた付け下げが評価されることはとてもうれしいことです。目立ちたい着物が売れる時代に、品格を主とした雰囲気のきものが評価されることは、わたしたちは仕事の中身と、物欲しそうなきものではなく、品格を中心に据えたきものを作ってゆくべきではないのか・・・と考えることが出来ます。わたしにとっても心に残る付け下げでした。

昨日につづいてわたしのお釈迦様のはなしにすこし時間をいただきたいとおもいます。紀元前6世紀という時代は、アケメネス朝ペルシャという巨大な国家がイラン高原を中心として東はギリシャ、西はインダス川までの地を占めていました。ギリシャのソクラテス、プラトンなどと同じ時代をお釈迦様は生きておいででした。500年ほど下がってキリストがイスラエルの地に生まれておられます。大きな時代の変革期にそれまでの社会通念が通用しなくなって、あらたな思想が生まれてゆくのでしょう。ペルシャはアレキサンダーによって亡ぼされアレキサンダーはガンジス川流域への進軍を計画しましたが部下の不服従にやむなくバビロンへの帰途につきます。ガンジス川流域ではマウリア朝が南アジアの地をほとんどを支配下に置き、最盛期のアショーカ王(BC268~232)は仏教に帰依され、仏教の理想とする政治の実現を目指しました。同時にアショーカ王は他の宗教も弾圧することなくバラモン教、ジャイナ教、アージーヴィカ教などを保護しました。仏教の主張がが他の宗教とどのように違ったのか、とても大切な点だと思います。