インドの気候風土

バラモン教について簡単に説明できないものか・・・と思ったのですが、インドにとってバラモン教は単なる宗教といった存在ではなく、社会の基底を形作っている文化そのものでもあります。数行で表現できるような単純な存在でもありません。インドの気候風土と結びついて長い歴史を持っています。まず、インドという土地そのものから知る必要があるように思います。インド大陸は一辺が2000キロの三角形を北回帰線を中心に折り返したような大きな菱形をしています。北端は中国やパキスタンとの係争地であるカシミール地方で、北緯38度。南北朝鮮の国境線と同じです。南は北緯8度。タイ、マレーシアの国境線、フィリピンのミンダナオ島付近ですから、インド大陸は大きな国ではあります。面積は日本の9倍で中国に次ぐアジアで二番目です。山岳地帯が少なく、なだらかな平地が国土の多くを占めており、土地は肥沃で農業生産が始まってからは豊かな生活を送ってきた歴史があります。インドでは自然から食料を得ることには特段の努力を必要とせず、分配に関する道徳や倫理観が重視されました。生産に不安はないのですから分配に関心が向かうのはごく自然なことなのでしょう。日本の歴史やヨーロッパのプロテスタンの間で芽生えた勤勉を尊び、蓄財を奨励するような倫理は生まれなかった・・・。インドの宗教では無所有と完全な放棄を説きます。無所有であっても食料の生産に不安がなく、分配の倫理が確立していれば生きてゆくことはできます。わたしなどには想像もできない国の成り立ちだとおもいますが、そのような国土を持った国であったからこそ世界でもっとも哲学や宗教が極められたと評価される思想の大国がうまれた・・・とも言えます。ちがった一面としてインドの置かれた気候風土もインド哲学におおきな影響を与えていると説く学者の方々が多くいらっしゃいます。