白木さんの付け下げ

数日ぶりにおめにかかります。孫の運動会があり、とても楽しい一日をすごしたりしていました。昨日は、京都から2社の買い継ぎが上京してくれていまして、制作現場の状況をいろいろ教えてもらっていました。いま日本は人手不足が社会問題になっていますが、私たちの業界の中でも特に制作の現場はとても深刻な人手不足に陥っているようです。捨松さんでも先日5点送っていただいたのですが、柄に不足を申しますと、すぐに次の買い手が求めていかれるようで、早くに返品を要求されます。織り手が不足で帯が作れないのです。京都の友禅や帯地ばかりでなく、小千谷も五泉も福井の裏地も、おなじような状況のようです。絹織物の業界に夢を求めて入ってくる人がいない・・・のが現実ですね・・・と話されます。ともあれ、わたしはなんとかはずかしいような着物を求めていただくことなく、呉服屋としては幸せな年月を過ごさせていただいたと感謝しています。

写真の付け下げは白木さんといわれる業界では知らぬ人のないいいもの屋さんの作品です。北川さんも最後のころは高級品の部分は白木さんに依存されていたようです。わたしがよく求めましたのは三十年も前のころかとおもいます。久しぶりに求めてみました。ごらんいただきますように、ぼかしに刺繍の付け下げです。生地は大塚の880gという鬼しぼのちりめんです。ぼかしのタッチと刺繍の腕だけでつくられています。写真よりも穏やかで優雅な雰囲気の作品です。(素人の悲しさでどうしてもいい写真にならないのです)ぼかしは誰にでもできるのですが、職人によってその世界は大きく違ってまいります。このぼかしはひと目見てわたしは感じました。いい手です。写真より上品な染め上がりで、いかにも白木さんらしい染め上がりです。自己主張の少ない、品の良さを旨とした作品ですが、お茶席をはじめ、観劇などこのきものを必要としていただける方がいらっしゃることを念願しています。¥180,000、-(別税)でおねがいいたします。