真糊、菱取り若松

 

 

真糊の特長がよく出ている付け下げです。わたしが真糊がすきなものですから、笑われるときもあるのですが、上手な職人の手にかかった真糊は良く生きるものですから、魅力に引き込まれて注文いたします。若松を菱の中に収めた格調の高い付け下げですから、新年のお祝いの席などにお召しいただけます。最後の写真ではよく真糊の粗削りな力強さが出ているかと存じます。地色は鶯茶ともうしますか、挽茶ともうしますか、お抹茶の色でございます。茶席には抹茶の色のきものは・・・とおっしゃられる方もございますので、ご配慮いただきたいと思いますが、力のあるすばらしい地色です。この付け下げも染め屋さんも値段も申し上げれないのですが、一級品の付け下げでございます。

この付け下げでわたしの注文のものは終わりました。途中でほしくて求めるかもしれませんが、今年の夏で自分の体力の限界もわかりましたし、今年の暮れを目指してすこしでも在庫をお求めいただくように努力をしてまいりたいとおもいます。夏休みも終わりまして、明日から気持ちを引き締めてきものの中に入って生活をしてゆきたいとおもいます。よろしくお願いいたします。

帯の図案

なんかの御さんこうになるかもしれません。ただいま取り掛かっているブドウの柄の塩瀬の帯の図案をごらんください。今年の11月にはお使いになられる帯ですので、図案に変更がなければ9月に入りますと糊伏せ、地染め、彩色と工程を急がねばなりません。まず、糊をどのように伏せるか・・・この帯の注文の方は真糊で・・・とご希望ですので、青花で下絵を生地に描き、糊で伏せてまいります。真糊の場合は図案の上からなぞって糊を伏せることはできません。一点のものを作るように、筆で生地に直に下絵を描きます。真糊で描いた線が生きいきとしているのは、筆の勢いがそのまま表現されやすいからです。ひと月ほど前、素案を出してブドウの柄の帯を注文いたしました。二通りの図案を見せてもらいましたが、お客様がこの図案の方を選択なされまして、実際にはもうすこし小さく描いてもらうことでスタートいたします。ブドウの色をどのように表現してゆくのか、葉の色は・・・地色とのバランスは・・・など、これから染屋さんと色挿しをなさる職人の方との話を聞きながら、お客様の世界と帯そのものがよく生きて出来上がりますように相談をしながら進めてまいります。楽しい緊張感のある二か月ほどの時間を私も味わわせてもらいます。呉服屋の喜びでございます。この絵を描くくらいの職人は、染屋さんも一目置いておられますから、まず職人の意見を聞きます。わたしは、お客様のご希望を聞いていますので、おおよその ”このような感じに・・・”と申しますくらいで、細部までは申しません。染め屋さんや職人の人たちの独創性を尊重するほうが結果はいいものができるようにおもっています。このようなことを中心に毎日緊張をした日々をすごしていおります。ありがたい80歳です。

真糊、琳派 波の柄付け下げ

 

 

 

真糊の付け下げの優れものをごらんください。江戸時代から明治にかけて防染の糊はもち米を固く練り、筒状の入れ物から絞り出して糸目糊を置いていました。ゴム糊が輸入されて、ごく細い糸目糊がおけるようになり、手描きの友禅にとっては大きな味方ができました。ごく細い糸目を置き、繊細な絵模様を描けるようになったのですから、長足の進歩といっていいとおもいます。また、防染も完璧ですから、強い赤の隣に白を置いても色のにじみなどが起こりません。万能の糊のように思われ、現在では以前の真糊を使う友禅はほとんどなくなりました。たぶん、問屋さんや呉服屋さんでも真糊をご存知のない方が多くなられたと思います。でも、少数ですが真糊の味わいが好きでお求めいただく方もいらっしゃいます。真糊は防染のための線がどうしても太くなりますので、シャープな絵になりにくいです。太くなったり細くなったり、定規で引いたような線はどうしても置けないのです。ゴム糸目を比べますと一見下手な糊置きのようにみえます。でも、日本の自然はもともと穏やかで、木々の枝ぶり、水の流れ、朝もやに煙るかやぶきの屋根の家並み、どれ一つとっても鋭さからは遠い風景がおもいだされます。真糊の友禅はそのような感性を表現するのにはとても適した技法でもあります。でも、真糊は職人の技術でまったく違う世界になってしまいます。難しい・・・です。気温や湿度に影響されやすく、その日の気持ちがすぐに出てしまいます。わたしは漆の塗りの世界に近いようにおもっています。焼き物に例えますと、磁器と陶器、石ものと土ものの違いのようにおもっていただけるでしょうか。この染屋さんが、琳派の波となずけられましたのも、ゴム糸目の完璧さからほど遠い、職人の気持ちがそのまま線に表れている染め上がりに琳派をイメージされたのでしょう。この付け下げは訪問着仕様になっています。胸の柄は衿にも袖にも通っています。裾回しは付いていませんが格は重い作りになっています。まあ、威張らない礼装のおきものと申せましょう。地色は鶸色ともうしましょうか、若草色に近い若竹のような地色です。上品な付け下げのひとしなです。染め屋さんも値段も表記できませんが、お気に召していただく方がいらっしゃいますことを祈念いたしております。

白木の付け下げ

 

 

 

 

白木の付け下げをごらんください。最後の写真に重さが表記されています。880gの目方です。古浜ちりめんとしても800gくらいが普通なのですが、重い生地を使っています。大塚の生地ですからこの目方も珍しくはないのですが、持ってみますとずっしりと重い感じがいたします。付け下げとしてはごく普通の何気ないぼかしと刺繍の作品ですが仕事の内容をみますとなかなかいい仕事がしてあって、さすが・・・とおもいます。最初の写真は袖の柄です。二枚目の写真が上前の部分になります。三枚目は上前のアップの写真で,4枚目の写真は胸のアップです。年末に向かって安くお求めいただき、在庫をなくさなければなりません。¥140,000、-(別税)でおねがいいたします。

今年の猛暑はとてもたいへんです。命に係わる暑さ・・・とテレビで言われる言葉を実感として身に沁みて感じます。わたしは今年の夏はぼんやりとは過ごせない状態です。創作しなければならない作品がただいま6点加工に入っています。毎晩寝床の中で、あの訪問着はいまこのような段階にあり、地色が染まったところ、あの帯は八分通り完成して、もう安心・・・などとそれぞれの成長の過程を思い浮かべながら眠りにつきます。信頼できる染屋さんですから安心できますが、もし思うような上がりにならなかったら・・・と考えかけると眠れません。あまり老齢になってからの重い責任はやはりたいへんなこと・・・とおもっています。もっとも、与えられた仕事の喜びは何ものにも代えられませんが・・・父が生きていてアドバイスを与えてくれたらどんなにか助かるだろうと思うことがあります。まいにち悩みながらすごしています。

藤井絞り、小紋・胡蝶

 

藤井さんの絞りの小紋が一点残っていました。色がなかなか出ませんでしたので、あきらめてアップしなかったのではないか・・・とおもいます。きょう、写真を撮影しましたら、わたしには珍しく忠実度の高い色が出せましたのでアップいたします。藤井さんについては皆様のほうが商品内容をはじめ、経営方針などよくご存じかと思います。値段は高いけれど絞りの技術も生地も一級品・・・そうですね。たきちにも藤井さんのフアンがたくさんいらっしゃいます。わたしもとても惹かれて今日までお付き合いいただきました。まことに残念ですが、永久にわたしが呉服屋をしていることはできません。80歳はいい区切りになりますかとおもっています。在庫の中で藤井さんのものはもう10点くらいになりました。この小紋も値段を下げてお求めいただこうとおもいます。¥98,000、-(別税)でおねがいいたします。

菱健、小紋・七宝花丸

 

 

この柄も追加のご注文をいただき、染め直しました。一反だけでは染めてもらえませんので、最低二反染めることになります。品の良い格調の高い小紋ですので、夏に向かってですが染めてもらいました。先日の四花弁の小紋が目の覚めるようなあざやかな染めでしたので、この小紋は地味に見えるかもしれません。でも、菱健のこのクラスの小紋はやはり評価を高く持っていただきたいと思います。細やかな加工は菱健ならではの染めなのですが、インクジェットやプリント系の染めでは表すことのできない気品があります。秋になり、涼風が立ちそめるころ思い出していただきたいとおもいます。¥79,000、-(別税)でおねがいいたします。

小紋・四花弁

蝶のように見えますかもしれません。この小紋は花弁四つの花の連続模様です。その一部を手描きで描いています。四花弁の柄です。デザインを拝見したときとても気に入り注文いたしました。地色は写真よりすこし明るいきれいなブルーです。染めの次第は、送りで地の小紋柄を糊で伏せ、蝶のように見える部分は糸目を置き中を糊で伏せておきます。地色を染めて糊を落とし、糸目の中に彩色をして、蒸気で蒸して定着させ、水洗いをして糸目糊を揮発で洗って完成です。地の小紋だけでもなかなか魅力的なきものだと思いますが、手で一部を起こしますと豪華な小紋になりました。付け下げほどいたしましたけれど、普通の付け下げよりおしゃれで重い加工のきものにしあがりました。値段も染め屋さんも申し上げれませんが、たきち好みのきものでございます。注文の手描きの染めの小紋はこれでだいたい終わるつもりでございます。型の小紋はまだ染めあがってまいります。