実用きものとは・・・・

菱健彩色小紋部分-500

せんじつ、あるお客様が来店のおりこんなことを話されました。「年金生活の私でも出来上がって10万円くらいのきものなら、帯とセットで年に二組くらいは作れるのですが・・・・」実用きものを心がけているわたしとしては、このような言葉は身に沁みます。実用きものとは、生地の糸質が良く、染めものであれば染色が深く、二世代三世代着ていただいて飽きのこない高品質のきもののことです。作家ものといわれるきものであっても、小紋で10万円くらいで仕立てあがるのでしたら立派な実用品です。また、プリントの染めで、横に並んだ時浅薄でがっかりするようではコストとして高いですからとても実用きものとは言えません。わたしはこのような原則は時代を超えて変わらないと思っています。わたしたち業界が原則から逸脱したときは、ふさわしい答えを着る人たちから受け取ることになるでしょう。(値段はただいまの時点の額ですが) この方はお茶の歴史が長く、着物がどうしても必要な方で、ご主人と一緒にお越しになられるのですが、わたしは御用をさせていただくことがとても楽しく呉服屋冥利尽きると思っています。