寛文小袖、訪問着

 

 

およそ2か月ほど前、まだ彩色の工程に入っていない状態でごらんいただいていました訪問着が染めあがってまいりました。かって、寛文小袖と呼ばれた大胆な構図の訪問着でございますので、わたしも、ご注文いただいたお客様も楽しみにしていました。お客様にはとても満足していただき、わたしもほっといたしました。わたしはもうすこし強いタッチで染めあがるかな・・・と思っていましたが、ご覧いただきますように穏やかな品の良い染め上がりになりました。これは指揮を取る染め屋さんの功績です。お召しいただくお客様に会っていただいていますし、どのような席にお召しになられるかわかっていますので、ふさわしい染め上がりになるよう色挿しの職人の人たちを指揮していただきました。加工は重かったです。わたしの役割は少ないではないか・・・とみなさまお思いかもしれませんがそうでもないのです。お客様のご希望を代表して、職人を総括なさる染屋さんと気持ちをそろえて出来上がりのイメージを共有するまでがとても大切なのです。あとは染め屋さんの能力を信頼してお任せいたします。何もないところから作り上げてゆくプロセスをお客様は経験していただきます。ただ一つのものを作る楽しさばかりでなく、多くの工程の職人の技もご覧いただくようになります。呉服屋冥利につきる仕事をさせていただきました。この作品の成功は染め屋さんの功績が大きかったと思っています。