付け下げ二題。

 

 

 

 

 

 

わたしがあつらえています風神雷神の訪問着の打ち合わせのために何度か染め屋さんと会っています。今回は、めったにないことですが、どうしても欲しい付け下げが二点あり、ともに求めました。上の淡いグリーン地の付け下げは、衿から袖まで、身頃も上前、脇縫いとすべて柄の合い口のある訪問着仕様になっています。作りが豪華なきものではございませんので、付け下げとして申し上げています。写真ではございますが、見事な糊糸目です。これだけ簡素な付け下げで、これだけ見ごたえのる作品に仕上がるのは、糸目を置く職人の技術がいいのと、色を挿す職人の呼吸がぴったりと合っているからだと思います。わたしはこのような作品を作る日本人の生き方が大好きです。職人の手になるのですが、作家さんのように自己主張するのではなく、ただひたすら技術を磨き、感動を呼ぶ作品に作り上げます。この染め味を伝えたくて80歳のいまも呉服屋がやめられません。この作品も、下の桐の柄の作品も仕事は当代トップの職人さん達の手になっているのですが、ともに見てホットするような和やかに穏やかさを感じていただけるのではないでしょうか。わたしは日本人はこのような生き方をするのがもっとも似合っているのではないかと思っています。声高に自己主張を世界に語るのではなく。