裾回し。

八掛(裾回し)はきものにとってはとても大切な部分です。私自身、裏地についてはそんなにこだわりを持っていないのですが、八掛についてはとても気を使っています。普通、多く使われているのは精華と呼ばれる強い撚糸のパレス地です。だいたい既製品で一疋800g~930gくらいの目方で、染め上げて準備されています。ぼかしも色数をそろえて、同じくらいの目方の既製品が準備されています。一年に一度くらいお召しになられる方が多い時代ですから、八掛の目方はそれで十分だと言えばその通りだと思います。たきちの場合は、多くのお客様がお茶のお稽古着としてもお使いです。また、お茶の先生方は毎日がきものですから、八掛が擦り切れることは常時でもあります。どのような生地が裾切れが少ないか、着心地はどの生地がいいか・・・・何年も生地を替えて試み、お客様方とも相談しながらどうやら80点から90点をいただける仕様にこぎつけました。点数がすこし低いのは値段なのです。ただいまは五泉のチエニーを1000g超えた目方で織ってもらって使っています。どうしても3,000円くらい高くつきます。ただ、裾切れで仕立て替えが2~3年延びるだけでも3,000円以上の値打ちがあると思っています。先日来、仕立てやさんに八掛を任せましたところ、既製品を使われまして、改めて自分の甘さを実感いたしました。一点ずつ表の色に合わせて別染めをしてまいりましたが、そのような配慮は呉服屋の役割であり、仕立て屋さんは指示いたしましても、実感をもって対応をしてくれません。”どこでもこのやり方ですから、どうしても別染めがご希望なら、八掛は染め上げて添えてください・・・・” と言われます。今後は八掛は必要な方は、生地は手元に置きますから、どうぞご注文いただいて、別染めをさせていただきたいと思います。コスト的にも、着心地から申しましても、こちらの方が安いと思います。このチエニーという織り方は、最近の重い特殊なちりめんの生地にも、大島のような平の織り方にも、紬のざっくりとした織り方にもよく添ってくれます。すこし羽二重てきな感触があり、捌きが楽です。反省とともにご報告とお願いでもあります。