染めの感覚を忘れそうになりました。

 

 

コロナヴィールスに振り回された3ヵ月でした。過去形ではなくいまも大きな脅威として私たちのの身の回りに大きな影響を与えています。わたしは年齢的にも、持病の上からも感染するとまずヴィールスの格好の餌食になるだろうとは想像していますが、こればかりはいかんともなしがたく、できるだけ外出を避けて生活をしています。そのような生活をいたしておりますと、60年のあいだ毎日染め物に親しんでいました感覚がすこし鈍くなり、昨日見ていた衣桁の小紋がまた違った魅力を持って感じられたのが、あまり感動しなくなってまいります。わたしのようなちりめんや染めの世界で生きてきていますと、いいものに出会ったとき感動しなくなったら終わりだと私は思っています。単に売買ならばよろしいかもしれませんが、それでは人生がもったいないように思えます。お客様とはその方のきものの世界をおつくりになられるのをスタッフとして参加させていただいている・・・ように自分では思っているのです(生意気にも)。先日、京都の染め屋さんに電話をいたしまして、目の覚めるような素敵なものをもって出張してきてくれ!と叫んでしまいました。この小紋と帯はその折、お越しいただいたお客様にお求めいただいた品物です。小紋は、近江のちりめんと変わらない風合いを持つ紬地に手描きで友禅を染めています。わたしの写真の技術ではこれで限界なのですが、よく染めています。帯合わせはなかなか絶妙で、ぬいしめしぼりの素朴な縦縞の帯になされました。生地は小千谷です。緊張した二日の時間でしたが、私自身は生き返ったようにように思っています。寝床に入ってもいろいろとデザインや色合いのことを考えて眠りにつきます。しあわせな生活がもどりました。どちら様にも感謝しながら日を過ごさせていただけねば・・・とおもいます。