打たせ糊の付け下げ

昨年ご覧いただいたことがあると思います。中の柄は桐ではありませんでしたが糊自身は同じ染め方のものです。上品な付け下げとしてお召しいただけることになりました。他に薄色のボカシの付け下げなどもお求めいただいたのですが、写真に撮りましてもその陰影があまりにも微妙で、わたしの写真技術では到底及びませんのでみなさまにご覧いただくことはあきらめました。

今回は、来年の初釜のためのきもののデザインをご覧いただいたお客様がいらっしゃいました。一年をかけて創作させていただくことがこの数年つづいています。ほぼの基本のデザインは今月か来月くらいに決まりませんと時間的にゆとりをもって作れませんので、コロナ騒ぎの中でも時間を取っていただいたのですが、ご希望がカラーの訪問着で、これは大変に難しいご注文です。わたしには自分の中にカラーの訪問着の世界がいくら探してもありません。しかし、さすがに一流のプロですね。図案を染め屋さんが提示してくれました。さらに、お客様が、その図案に対してすこし変更の希望などを申され、ふたりのやり取りは中身の濃い、すばらしいものでした。私は呉服屋でありながら、蚊帳の外・・・といった感じで、話の中に入れませんでした。自身、老いた・・・と実感いたしました。呉服屋は必ずしも自身で創作する必要はありません。創る人とお召しいただく方の間に入って、双方のいい面ができるだけ生きますよう、また、円滑に進行しますよう内側で配慮してゆくことも大きな役目ですから、あまり余分なことを申さない方がだいたいにいいのですが、話は理解をし、出来上がりを頭に描いておかなければ役目を果たせません。でも、今回は、お客様と染屋さんに追いつけませんでした。とても考えさせられた日でした。