制作の現場。

ちょっと面白いきものでございましょう。80歳代のおばあちゃんが絞り、素描の作家さんがひょうたんを描きました。生地は紬地です。

昨年のきもの業界の状態をわたしは練馬の片隅から拝見しておりました。とても悪い状態で一年を過ごしていますが、今年も同じ傾向が続いていくであろうと予測できます。白生地の産地として最大の丹後地方は、私の生まれた故郷でもあるのですが、機屋さんに電話で注文しても、なかなか生産に結びつきません。大手の問屋が注文してくれませんと、私のような小口の注文だけでは機を動かすことはできないからです。染め物の最大の製造の場である京都の染屋さんたちは、リスクを避けてものつくりを可能な限り抑えています。では、販売の現場は・・・こちらも大変な状況でございます。お客様の信頼性の高いデパートでもたいへんな苦境だと聞きますし、展示会が専門の業者の方々は、展示会そのものが開けないケースが多いようです。京都の仕立てやさんに仕立てを依頼しますと、今までに例のないほど早くに仕立てができてまいります。洗いしみ抜きなどの専門の大手の業者さんでも、出勤を午前と午後と二交代になさったり、それでも仕事がありません・・・と言われます。このように申し上げますと、きものは沈没するのでは・・・とお考えになるかもしれませんが、そのようなことにはならないでしょうし、むしろお客さんにとって信頼に値する業界に変貌するいい機会が与えられている今日ではないのだろうか・・・とわたしは思っています。いろいろな角度から考えてみましても、きものは大変な資産を皆様の中に持っています。お客様方に接していますと、代々母から娘へと伝えられた感性がいかに膨大なものか・・・と感動することが多いです。業者としては、それに安住いたしますと、進歩が止まり、結局、伝統の上にあぐらをかく結果になってまいります。そんなことこんなこと・・・と雑談でございますが私なりにきものと向き合ってどのような明日のきものを作っていくのが着ていただく人たちにもっとも魅力あるきものになってゆくのではないかと思うことなどを申し上げてみたいと思います。