白生地の産地。

写真の帯地と、白生地の産地とは関係はございません。昨年の傑出した染めをご覧いただきたくアップいたしております。

今日は白生地の産地について、わたしの知っていることを申し上げてみたいと思います。わたしが丹後の生まれでしたので機屋さんは生活の一部・・・と感じられるほどちりめんの生産はごく身近なものでした。業界に入りまして、近江長浜や福井、新潟の五泉、十日町、小千谷、また、近江の絹などそれぞれに特徴を持った産地の白生地に接するようになりました。このように産地をごらんいただきますと、いずれも湿度の高い日本海側の土地でせいさんされています。白生地を織りますには高い湿度が必要でした。子供のころを思い出しても、霧を吹きかけながら機を織っておられたことを思い出します。母が織子をしていましたので、濡れ抜きでないとなぜ羽二重にならないか、よく聞かされていました。生産量では圧倒的に丹後がおおいのですが、留袖や訪問着の無地のちりめんでは近江長浜の生地が優れているように感じました。品質の面では、新潟県の五泉、小千谷の白生地はわたしはとても評価しています。特に小千谷の手つくりの白生地は、わたしでは買えないな・・・と思うほど高いのですが、優れていると思うものに出会います。また、みなさまにはポピュラーではないかもしれませんが、近江の絹も素晴らしいものを作っています。もともと、お琴の糸は100%滋賀県の産なのです。また、真綿布団の高級品は多く滋賀県で作られています。お琴の糸をほぐして織った帯地などは他に例を見ないいい感触を持っています。その他米沢など日本各地で紬の系統の白生地は生産されていまして、商品にならない節のある糸を養蚕農家の方が自家用に織られた白生地に触れて、その手触りの良さにびっくりしたことがあります。いい品質の糸が売り物としての白生地に全量提供されているとは限らないと思います。きものが生活の必需品であった昭和の二十年代三十年代までは、全国でそれぞれに白生地も紬の普段着も作られていたのだと思います。今後も折に触れて、染め上がり品の白生地のことについて申し上げることがあるかと思いますが、みなさまに於かれましても、それぞれの産地の生地の特長など、手触りやお召しになってみられてのお好みを少しずつお考えいただいてもよろしいのではないでしょうか。裏地の産地と特長などもすこし触れてみたいと思っています。