染め帯

先日、今年染めた夏帯を締めてお客様が店を訪れていただきました。わたしにいたしますと、お求めいただいたきものや帯がどのようにお召しいただいているのか、わかりませんので、このように拝見できて、品物のイメージと着ていただいた姿に違和感がないことを確かめれるのはこの上ない私にとっての勉強です。このような機会は求めますともっとあるような気がして、今後がんばってきていただいた姿を拝見したいものだと思っています。帯の柄は前だけしか見えないではないか・・・とおっしゃられるかと思います。そのためにたきちには旦那のブログのコーナーがございます。そちらで、お太鼓の柄や、発売時の写真と比べていただきと思います。旦那のブログでは、たきち好みでは語れない、業界のちょっと話せない裏話や、機屋の本音、また、わたしの個人的な考えや見通しなど、表では語れないようなことを話しております。こちらも愛読いただけるようお願いいたします。

職人の腕ときもの

この絽の小紋は、付け下げの風格を持ちながら、着やすい小紋の作りにしてございます。染めは付け下げの染めと同じ、下絵から糸目を置き、糊伏せ色挿しと手作りの重い加工です。夏物ですから、感覚としては、重さを感じてもらわないように、色数を抑え、淡白な中に気品ある出来上がりにしたいと願いました。糸目を置く職人と色挿しの職人の方の呼吸が合った作品になりました。もっとも指揮を取っていただく染め屋さんの力が大きいのですが・・・図案を見せてもらった時に地色は瞬間に決まりました。中の色は染め屋さんに任せました。(わたしよりよほどセンスがある方ですから)自画自賛ですが、ことしの傑作のひとつになったと思っています。さいわいお気に召していただき、ぜひ拝見したい・・・とお願いしていましたので、写真を撮らせていただきました。プリントが9割を超える時代に、このような作り方のきものにご理解がいただけるのは、まことの幸いなことです。

菱健の小紋Ⅲ

 

 

左端の小紋は葵の葉を小さく散らした上品なこもんです。生地は760gと少し重いのですが、新年のお茶席をイメージして3色染めたなかの1点です。地色はグレーですが、すこしグリーンが入っているようにも見えます。葵の葉は簡単ですが摺り染め加工にいたしてございます。希望とおり品の良い染め上がりになりましたが、わたしが極端に狭い世界を表現しようとしたのかな?と反省しています。でもさらりとして、これ以上色を抑えたり、柄を少なくしたらきものにならないほど余分を削いで染めました。わたしは気に入っているのですが、たしかに需要としては少ないのかな・・・?とおもっています。中央は地色を替えて染めた丸紋の小紋の中の1点です。生地をすこし目先を変えて大鳳さんの緞子地を使ってみました。地色もベージュに藤を挿したような柔らかい色です。右端は五泉の小熊の生地を使った鷺草の柄の夏の小紋です。五泉の小熊さんはしょうじき生地はいいのですが、とても高いのです。八掛の精華の生地でも以前は求めていたのですが、使い切れない感じでした。糸つかいはたしかにいいと思います。この夏物が一番原価は高く、わたしにはつらい値下げです。いずれも¥30,000、-(別税)でお願いいたします。

菱健の小紋Ⅱ

 

これらの小紋は、剣先がありますから、裁ち合わせにご注意ください・・・と注意書きがいたしてございます。剣先は染め難には当たりませんが、いまは裁ち合わせをする人が、素養がなく、端からどんどん切っていきますと、どうともならないケースがあり、染め屋さんはこのような注意書きを貼っておられます。剣先とは・・・染めの工場が三丈あまりの布を長く伸ばした状態で染める余裕がない広さの場合、生地を貼る型板を1丈6尺くらいにして、生地を折り返して染めてまいります。その折り返す部分を剣先と申しますが、どうしてもうまく染まらない部分が出来てまいります。江戸小紋は補修して見えないようにするのですが、直せない小紋もございます。菱健さんは、プリントの染めはなさらないので、剣先は無くすることが出来ませんし、地も引き染めと仕事は落としておりません。わたしも自分の体力、気力を量って、品数を少なく、もっとも得意の部分に集中したいと考えています。この値段は、品物に対してすまないこと・・・と思っていますが、どうぞお気に召せばお求めいただきたいと思います。¥30,000、-(別税)でお願いいたします。

菱健小紋、整理いたします。

 

 

 

菱健さんは京都の染め屋さんとしては、老舗ながら決してお高く止まらない、わたしにとっては貴重な染め屋さんです。何十年とお付き合いいただき、いまもって別染めなどお願いしています。特に菱健でなければ染めることが出来ない付け下げはとても強い味方です。似たようなものをいろんな染め屋さんが染めておられましたが、いつとはなく消えてゆきます。最近、みなさま付け下げを望まれる方が多く、ぼつぼつ地色や柄を吟味して菱健さんに染めてもらおうと考えています。ただいまはいろんな在庫が多く、まず小紋をある程度処分して、付け下げを染め出ししたいと考えています。菱健さんの小紋はただいま10反ほどありますので、これを全品¥30,000(別税)で処分したいと思います。ただ、今もって染め出しをする柄ですので、いつもできる値段ではございません。地色を替えてご注文いただいたりいたしますので、今回一か月の間の値段とお考えください。写真の上の2反は、生地の凹凸を生かして、シケ引きのような味わいを出しておられますが、普通に糊を置いて引き染を加工した友禅です。仕事はきちっと染めた友禅ですが、生地の特徴を効果的に使って、上手に作っておられるな・・・と感心いたします。お茶などのお稽古にもよく、街着としても何気ないなか、おしゃれな味わいがあります。単衣にもさわやかなきものになります。下の丸紋の飛び柄は、昨年末、新年のお茶席にお召しいただきたいと、五色染め出した中の一点です。柄の中は手で挿していまして、お年の幅も広く、若々しい品の良い礼装になる気品のある小紋です。

米沢紬、後日譚

先日ホームページでご覧いただいた米沢の紬のその後の話です。アップしました当日の朝、ご注文いただき、お求めいただいたのですが、すぐ後に遠くの方から問い合わせがあり、売却済と申しあげました。夜になって別なお客様からこの紬を・・・と電話をいただきました。みなさまよく存じ上げているお客さまであり、これはお断りすればいい・・・では済まないと思い、昨日織っておられる斎藤さんに依頼いたしました。答えは”織れません”ということでした。手織りの紬と申しますと、みなさま織り手のことを思い浮かばれるかもしれません。実際には、織りは最終工程で、その前の絣の設計や柄の部分の染め、整経など多くの工程があります。そのどの部分が欠けても絣は織れません。わたしは置賜の紬はとても好きで、求めてまいりましたのですが、今は二社のみになったそうです。米沢に限らず、西陣の帯の状況、京都の染めの現場のはなしなど、毎日のように耳に入るのですが、大変つらい状況になっています。まことに残念なことですが、いままで築いてきた技術や感性の世界はいちど滅びの状況に至るのではないか・・・とおもえるほどです。とりとめのないことを書き連ねました。すみません。もうしあげたかったことは、このような文化財にはなれないが、健康なきちっとつくられた中級のきものが需要の減退とともに、なくなろうとしている今のきものの状況です。これは避けることができない方向だと思います。超高級品と粗悪品の二極化がすすむのでしょうか。わたしのような、毎日をきものですごされるお客様の手足である呉服屋にはとてもつらい現実です。

丹後、お召し機白生地と五泉駒絽白生地

 

さきほど丹後から着いた白生地の中に、早くホームページでお知らせしたい生地がございましたので、アップいたします。1反は、お召し機の白生地のAB反です。760gとすこし重いのですが、単衣にも袷にもいい柄です。お召し機については、前にも申しあげたのですが、再度申し上げますと、白生地には、生糸で織る場合と練った糸で織るお召し機の二種類があります。ほとんどは生糸で織り、そのあと精錬をして柔らかくいたします。ちりめんなどは生糸で織らないと独特のシボが上がりません。それぞれに特徴があるのですが、江戸時代もお召し機がほとんどだったといわれています。わたしが育ったころは、丹後ではほとんどは生糸で織っていました。お召し機はすこし織るのに難しいようで、いまでも少ししか織られていないようです。15反届いたのですが、わたしの好みもあり、この1反のみ求めることにいたしました。この反物は1尺4分あり、裄が長くほしい方に十分対応できます。73センチまではできます。¥32,000、-(別税)でお願いいたします。

もう一反、ご覧ください。五泉の駒絽685gです。織上がりから時間がたっていまして、少し黄色くなっています。わたしは、このような安くはいった生地でウオッシャブルの長じゅばんになさることをお勧めしています。こちらは珍しく裄が72センチ、1尺9寸にできます。685gは重すぎるのですが、先日700gくらいの生地を長じゅばんにしていただきましたが、ウオッシャブルにいたしますと、生地も柔らかくなり、着心地はとてもいいと評価していただきました。1反しか入らなかったのですが、絽の襦袢は、5月から9月いっぱいお召しいただいています。お召しいただき半襟を付けたまま洗濯機に入れて洗っていただけます。何よりも気持ちがよく、たびたび洗いに出される必要がありません。お勧めの長じゅばんです。¥12,000、-(別税)でお願いいたします。

先日、裄が74センチになる着物はありませんか?とお越しになられた方がございました。小紋の型紙の幅では70センチが限界です。大きな設備の変更を伴いますので、柄物ではいますぐには対応できないのが業界の実情ですが、白生地は広幅は織られていますし、転写の染めですと、生地さえ広幅でしたら染めることが出来ます。私の力ではどうすることもできませんが、すこし時間がたってすこしづつ改善されてゆくことを祈ります。いまはひとつづつ裄を長くできる品物を選んでいただくより致し方がないと思います。