元禄のころ完成・今日のきもの姿

藤田八寸-500.jpg

 小袖の裾が長くなり、外出のときには腰ひもにかけて上げをとりました。お端折りのはじまりです。きものが豪華になるにしたがって、帯も織りが凝り、幅も広くなってまいります。上級武士の奥方や、江戸城の大奥をはじめとする大名の奥向きのおひきずりの姿は優雅で、誰しもがあこがれ真似をしたくなるほど魅力的な衣装であったでしょう。町人の中でも富裕層はどんどん豪華な衣装を身に着けて芝居見物や参詣などに繰り出します。度重なる幕府の奢侈禁止令にも関わらず・・・・です。

染色の発達

芭蕉布-500.jpg

 江戸時代の初期に話がもどりますが、染色が防染糊の発明で飛躍的に発達し、色も豊かに大柄な友禅の柄付けがなされるようになってまいりますと、裾を長く伸ばさないとバランスがとれないように感じられ、上流の非労働階級の奥方を中心に「お引きずり」というきものの着方が生まれます。

珍しいお客様

アマニュエル3-500.jpg

 ニューヨークから珍しいお客様がいらっしゃいました。わたしの息子が二十歳のころNYで写真の女性にたいへんお世話になりました。このたび結婚なさって夫君と里帰りです。夫君はエリトリア出身の化学の博士で、NY在住です。お茶席を経験してみたいとのご希望で、きものもはじめて着ていただきました。

アマニュエル12-500HP.jpg

 亭主のご厚意で、お茶を立てておいでです。ただ一度の亭主のお点前を見て、茶杓の取り方、茶筅の使い方など会得しておられました。一同その感性に脱帽です。奥様の言葉では、化学は観察が基礎!すばらしい集中力でした。温厚で人の話をじっくりと納得するまで聞かれる態度・・・・など、魅力ある方でした。

変化の意外性

結城地機紫地-500.jpg

 衣桁にかけたきものの表情と着たときの表情には大きな違いがあります。動きを与えることで変化が生まれるのですが、単純な直線だからこそ変化は豊かになるのだとおもいます。洋服をけなすのではありませんが、立体に立体裁断の衣裳を合わせるという発想はそれこそ単純なのでは・・・・とわたしには感じられるのです。

直線の美しさ

 

小千谷真綿結城夏用-500.jpg

 世界の多くの人々が、着物姿は美しい・・・・と讃辞を寄せられます。ローカルな民族衣装への「ものめずらしさ」だけなのでしょうか?また、カラフルな色彩への讃辞なのでしょうか?わたしは公平に見て、きものは世界の中でも美しい衣裳の一つだと思っています。その最も大きな要素はきものの仕立ての基本になっている直線にあると以前から思っています。直線の美しさ・・・・とは単純の美しさと言い換えてもいいとおもいます。洋服は体に合わせて作るわけですから、とても合理的な考え方です。きものはその点、非合理的・・・・とさえいえます。複雑な洋服より、単純なきものが美しい・・・・とは牽強付会ではないか・・・・

直線と立体

紬真綿縞柄-500.jpg

 村上さんは六本木の稽古場で汗をしたたらせて鏡獅子を舞うお弟子さんの姿に圧倒されます。村上さんが得られたものがどのようなものかわかりませんが、文中で村上さんは「当たり前のことですが、人間の体は動いている立体なのです。この平凡な原理が現代のきもの業界にも「模様師」にもよくつかめていません。ただ、目先を変えれば売れる・・・・などと思うのは浅薄な思想です」と述べられています。

 

きものって・・・・

金茶地-500.jpg

 その婦人はつづけて「あなたね、呉服屋やデパートのウインドーにかかっている着物を追いかけちゃ駄目。着物は着るもの。ショーウインドーにぶら下げて飾って見せるものじゃないのよ。飾ってきれいだって着れなきゃ何にもならないでしょ。衣桁にかけてちぐはぐに見えても着られる着物をお描きなさい。第一、あなたには、女の体が何にも判っちゃいない。でも、どこか見どころがあるわ。これ終わったら私の稽古場に来てごらんなさい」村上さんはいただいた名刺の稽古場をたずねられます。