紋紗と夏帯

 

 

このコーナーは、たきちの宣伝の場ではございませんので気軽に覗いてみてください。写真の方はお嬢さんのように見えるかもしれませんが、結婚しておいででございまして、車の中にはゴルフバッグを忍ばせておられる、文武両道?の達人です。きものはとてもお好きで、実家のお母さんのきものも多くを着こなしておいでです。いまは週に2~3回はきものをお召しになっていらっしゃいます。帯の生地は小千谷の座繰りの絹糸で織った夏用の帯地です。染め屋の名前は出さない約束ですが、京都の染め屋さんです。柄の名前は「アールヌーボー」。家内がしばらく入院していましたので、わたしが柄を選んだのですが、ちょっと不安がありました。わたしにしては古典柄でなく、ちょっと冒険だったのです。それが、お使いいただいて、お友達の方々にもとても好評でしたよ・・・・とうれしいお話を聞きます。80歳近くなりましても、勉強々々でございます。

 

真糊

最初の写真は、お召しいただいての左肩の図案です。下の二枚は、染め上がりの時点での写真です。やはりきものは着ていただいて命が吹き込まれます。真糊の力強さも動きが伴うとより生きるように感じました。上前などの写真はアップできませんが、着ていただいて生きているように感じます。このような機会を与えていただきますと、作ってみたい・・・・・という気持ちが湧いてまいります。わたしにとってもとても貴重な日でした。

額裏

額裏・雷神-500赤富士-500釣り-500額裏・獅子-500

額裏・・・・と申し上げましても、多くの方はご存知ないかもしれません。男性の羽織の裏で、この様に一つの模様になっているものを額裏と呼んでいます。紬などに額裏を使うことは少ないのですが、紋付の羽織の裏には額裏をつかうことがおおいと思います。最近は中国製かプリントで染めたものが多いのですが、このように絞りでそうとう凝った額裏も僅かですが使われることがあります。先日ご注文があり、藤井絞りさんからお送りいただきました。拝借していますので、本来はHPに出したりするべきではないのですが、このようなものもまだ日本で作られているんです・・・・と知っていただきたくアップいたしました。生地はチエニーと呼ばれている、男性の長じゅばんなどに使う生地の軽めです。魚釣りの柄がありますが、趣味でフィッシングをなさる方などが注文なさるのでしょうね。贅沢な趣味の羽裏です。

川島さんの数十年前の丸帯

川島・丸帯1-500川島丸帯2-500

先日、川島さんの丸帯を重いので二本に仕立ててもらいたい・・・・とこの帯をお持ちになられたお客様がありました。まことに見事な帯で、いまではここまで重い織りの帯は(作れないことはありませんが)まず市場にありません。かってはこのレベルの帯が織られていたんだ・・・・と、一見の価値ありと思いご覧いただきたいと思いました。今ですと200~300万いたしますでしょうか。かっての時代、独身男性の一年分の給料に相当する帯地が結納として贈られました。こんにちですと、おかしな習慣・・・・と一笑に付されるかもしれません。しかし、70年前までは生きていた考え方でした。わたしも知らない時代なのですが、この帯に触れて、贈った方、受け取られた方につい思いがおよびました。年寄りは感傷的になるようですね。

唐織で締め切りの名古屋を・・・・

〆切り参考柄-500

今年の五月ころ、泰生さんで織ってもらった締め切りの名古屋帯をご覧いただきました。点数も僅かしか作れませんし、袋帯を名古屋に織るためには、筬を替え枝抜きを替え、整経から替えてまいります。機の拵えそのものを変える・・・ようになります。よく、泰生さんが引き受けていただけた・・・とおもいます。好評をいただき、次の締め切りを考えなさい・・・とご注文いただくのですが、量産なさる機屋さんでは造りがいい加減になりますし、今回は唐織で挑戦したいと思いますので範囲がうんと狭くなり、どこにも引き受けてもらえない日々が続きました。ふと、数年前に織ってもらった、個人でこつこつ織っておられる職人の方を思い出して、お願いしたところ、引き受けてもらえる運びになりました。もと、山口さんで織っておられた職人の方です。本格派の唐織りを織ってもらえます。今年の暮れ頃にはなんとかご覧いただけるのでは・・・・と思います。ご期待ください。

茶室5

茶室5-500

わたしが聞きたかったことは、例えばマンションの和室を茶室に改造するのに、どれくらい予算を考えるのでしょうか・・・?という点だったのですが、「それはわからない・・・・施主のご希望に沿った茶室によります・・・。ご希望を聞かなければわかりませんし、ひとつずつ違います」中川さんはお目にかかって感じるのですが、典型的な職人肌の方です。職人はどのように自分の仕事を考えるのか・・・職人にとっては、完成した仕事が自分の誇りであり自分そのものです。誇りを持った職人の方に仕事をしてもれえたら、それはまた施主の誇りでもある・・・ようにおもいました。お目にかかってとても楽しく、さわやかな風が吹き抜けたような時間でした。

茶室4

中川岳頼さん-500

中川さん。前出の茶室を作られた方です。江戸不白流の家元の茶室を手掛け、杉並区の技能功労者でもあります。昨夜、一升瓶を間においてお話を聞かせていただいていました。じつに楽しい一夕を過ごしました。多くの話の中で、二つとても学ばせていただいた考え方がありました。一つは、茶室を造るときどのようなことを基本に進めるのか・・・とお訊ねしたのですが、茶室は自由だ!どのように造っても構わない。こうでなければならない・・・・ということはありません。施主の希望を聞いて考え、工夫をします。何度も話し合い、ご希望に沿うよう工夫を重ねます・・・完成した茶室は、施主の世界が表現されています。わたしは手足であっても私が造るのではありません・・・・実に貴重な考えで、このように思うことはフレキシブルに対応ができて、お客様の希望が最大限生かされるのではないか・・・・わたしより二年先輩で、昭和12年生まれの方ですが、柔軟な頭ですね。