一子相伝

カワサキ刺繍袋・ベージュ地-500

風姿花伝は観世家の一子相伝の秘事でした。いま読んでも実践を通して得られた深い人生観照に満ちていると思います。

本来よりよき、あしきとは、何を以って定むべきや。ただ、時によりて、用足る物をばよき物とし、用足らぬを悪しきものとす。この風体の品々も、当世の数人、所々にわたりて、その時の偏き好みによりて取り出だす風体、これ用足るための花なるべし。ここにこの風体をあそめば、かしこにまた余の風体を賞玩す。これ、人々心々の花なり。いずれをまことにせんや。ただ、時に用ゆるを以って花としるべし。